ABOUT

「九州大学箱崎サテライト」は、九州大学の箱崎キャンパス移転の後、九州大学が保全していくことになったエリアです。

この箱崎サテライトの歴史的近代建物(旧工学部本館)にある「九州大学総合研究博物館」は、九州大学の開かれた窓―大学と地域をつなぐ交流拠点として、この地で博物館活動を続けることになりました。今後九大博物館は、大学ならではの特色を生かし、新旧の街をつなげるとともに、地域の文化・芸術・学術興隆を牽引していきます。

かつての学生街における豊かな博物館文化の醸成とそのさらなる発展のためには、我々大学博物館と近隣地域の皆さんが、真に対等かつ双方向的に連携(Engagement)し、穏やかな信頼関係をゆるやかに育んでいくこと大切です。そのための基盤づくりの取り組みが、この「地域共創協学ミュージアム基盤整備事業」です。

本事業は2021年度から、文化庁文化芸術振興費補助金「地域と共働した博物館創造活動支援事業」の支援を受けることになりました。2021年度は「街づくりを先導するユニークベニューとしての大学博物館を核とした地域共創協学のミュージアム活動基盤整備事業」として取り組んでいきます。

箱崎サテライトについて

箱崎サテライトを含む福岡一帯は、神話時代からの歴史がある。中国(宗)との貿易が活発となる8〜9世紀ごろからは、箱崎は“国際都市”の一角として栄えてきた。1900年代に入り、福岡市に帝国大学の誘致がなされ、当時の箱崎市街地の北に伸びる畑作地や墓地のあった砂州一帯が、キャンパス用地として開発された。

1803年に箱崎の隣町である馬出に現在の医学部の前身が設置され、箱崎には1911年に工学部の前身が設置された(1)。1990年に箱崎キャンパス移転が決まり、九大は2005年から2018年にかけて、大規模なキャンパス移転を実施(2)。広大な跡地は再開発地区として更地化され、2021年現在、インフラ整備のための工事がすすむ。まちづくりに関する計画検討がすすむなか(3)、現サテライトの一画は、歴史的建造物を含め保存・活用することとなり、2000年に九州大学として所有・活用し続けることが決定した。箱崎キャンパスには複数の近現代建物が存在していた(4, 5)が、現在は5つの建造物が箱崎サテライト内に残る(6)。そのうちの1つである「旧工学部本館」には、総合研究博物館と大学文書館が残留している。

九州大学
総合研究博物館について

九州大学の学内共同利用施設として2000年に設立。移転に伴う幾多の引っ越しに翻弄され、資料への減縮圧力や散逸危機に瀕しつつも、最終移転完了の2019年3月、約145万点の所蔵標本・資料を箱崎キャンパス旧工学部本館に結集させ、現在に至る。この資料保全や博物館の箱崎存続には、関連学協会や地域住民からの要望書による支援が果たした役割も大きい。2019年より旧工学部本館全体を博物館として公開する「博物の森」を開始するも、2020年3月よりCOVID-19感染症拡大防止に伴い2021年度まで一般公開停止中。

地元箱崎の方々との交流や協働は2009年ごろからはじまり、移転後のキャンパスを活用した初めての協働催事として、2019年5月に「はこざき 暮らしの あとつぎ市」を開催。息長くゆるやかな地元の人との交流が、今回の文化庁支援事業への応募・採択の素地となっている。

跡地開発エリアで福岡市が推奨する「Smart City」に対し、大学博物館を核として知的好奇心で新旧の街と人がつながり街全体がミュージアム化する「Hakozaki Museum City:箱崎ミュージアム街区」の形成を、本事業主担当者は目指している。

補助事業概要

I. 実行委員会: 地域共創協学ミュージアム活動基盤整備実行委員会

メンバー(2021年9月現在)
九州大学総合研究博物館:宮本一夫(委員長)、三島美佐子、中西哲也
箱崎探索収集研究会:花田典子
箱崎校区自治協議会:箱嶋次雄
筥松校区自治協議会:斉藤政雄
東箱崎校区自治協議会:馬場公司
松島校区自治協議会:高橋啓治
箱崎九大記憶保存会:高嵜浩平
事務・技術補佐:川﨑輝之、大坪豊和、布川圭子(九州大学総合研究博物館)

II. 中核館:九州大学総合研究博物館

III. 中核館以外の構成団体

箱崎探索収集研究会(はこたんクラブ)、箱崎校区自治協議会、筥松校区自治協議会、東箱崎校区自治協議会、松島校区自治協議会、箱崎九大記憶保存会

IV. 文化庁事業による事業カテゴリー

※うち■が本事業で対象とするもの

(1)地域文化の発信の核となる博物館
■ア 博物館の情報発信、相互連携
■イ ユニーべニューの促進
■ウ 地域のグローバル化拠点としての博物館
■エ 地域に存する文化財を活用した地域共働の創造活動や地域の魅力の発掘・発信

(2)あらゆる者が参加できるプログラム及び学校教育や地域の文化施設等との連携によるアウトリーチ活動
□ア 小・中・高等学校と連携した地域文化の担い手の育成
□イ 大学と連携した国内外で活躍する文化人材育成プログラムの開発
□ウ 社会人ほか多様な対象者のための学習講座の事業
□エ 障がい者の芸術活動支援・鑑賞活動支援などの事業
□オ 教育委員会と連携した鑑賞教育の実施

(3)新たな機能を創造する博物館
■ア 観光・まちづくり・国際交流・福祉・教育・産業等他分野との連携・融合による活動
□イ 文化財の新たな保存管理・活用の手法の開発

V. 事業目的

今後文化的エリアとして整備される「箱崎サテライト」おいて、博物館と大学文書館は共に文化・芸術・学術興隆の牽引装置として、地域と大学の交流拠点となるべく持続的な活動を担っていく。博物館は、地域の構成員たる市民と真に対等かつ双方向的で和やかな信頼関係に基づきゆるやかに連携していくこと(Engagement)が望まれる。そのような関係性は、それが「ゼロ」の段階から、両者が共に考え・学び・創りあげることで可能となる。そこで本事業の目的は、以下3つとする。

(1)当館が中核として既存の市民活動団体や地元自治協議会と共同した実践に取り組み、それをとおした「共創協学」の関係と場を構築する。

(2)福岡市の新たなかつ希少なユニークベニューとしてある、歴史的近代建造物群を含む箱崎サテライトおよび隣接する歴史資源(元寇防塁跡など)一帯を含めた「エリア・ミュージアム化」において、その活用のあり方を当館と市民が協働して考案できるようになる基盤を作る。

(3)コロナ禍で展開・見直された「遠隔」の多角的な手段を取り入れ、博物館・文書館ならではのアーカイブ機能と組み合わせた発信・開示・手法の開発と実践を試みる。

VI. 主な事業構成

[1] ラウンドテーブル事業
本事業の構成団体等をとおして地域住民やステークホルダーに呼びかけ、一堂に会した意見交換や課題抽出等を行う交流事業。一般的な「ラウンドテーブル」の形式にとらわれず、双方向的な手法を試みる。

①オンライン・ワールドカフェ(予定)
②オンライン・フォーラムシアター(予定)

[2] 協働実践事業
九大博物館と市民が協働してイベント等を企画・実施しながら、相互の知見やスキルを交換・共有する事業。これをとおして、双方向的かつ対等な関係性を構築することにより、相互の信頼と絆を形成していく。今年度事業では、「遠隔」において重要な要素となる「音」に着目し、以下の3つのプロジェクトをとおしてさらなる地域主体・団体・個人等の参画を促す。

①博物館ラジオ・プロジェクト:ミニFMを開局し、2つの波(音と電波)で博物館と街をつなげる。街の住民が自律的に「我が街」をアーカイブ化し気軽に発信できるようにするための基盤づくりとする。
②配信プロジェクト:ユニークベニュー(特別な場所)としての箱崎サテライトや九大博物館を、動画で紹介する。大学街であった箱崎界隈もあわせて紹介していく。いずれはこのようなコンテンツの制作と配信を住民自ら可能とするための基盤づくりとする。
③音楽イベント・プロジェクト:箱崎サテライトと街をつなげるきっかけとして「音」と「音楽」に注目し、催しをとおした人々との交流のあり方を探る。大学博物館や建物における「音」と「音楽」可能性も探る。

[3] アーカイブ事業
より良い基盤の実現にむけて、事業の記録と事業の改善改良を行う。