ミュージアム基盤整備事業の一環として開催される音楽イベント「Listening Musicum~博物館が聴く」。その舞台は、九大博物館がある旧工学部本館です。1930年に建造された本館は、かつての箱崎キャンパスのシンボルでした。その完全なシンメトリーの外見だけでも圧倒されますが、その内部も、さまざまに意匠を凝られた空間に満ちています。
ユニークベニュー(特別な場所)としての旧工学部本館を体験するために、この音楽イベントが企画されましたが、コロナ禍のなかで、多くの方々をお迎えすることを断念しました。しかしながら、旧工学部本館の最上階の展望室や大きな壁画のある会議室、さらには不思議な計測機器が並べられた工学系資料開示室など、時間がとまったかのような博物館の場を舞台にした三つの音楽公演を収録し、配信することになりました。そして、それぞれの配信の公開に合わせて「オンライン&トーク・イベント」を箱崎水族館喫茶室で開催します。
博物館をさまざまに響かせるのは、福岡を拠点とする3つの演奏グループです。「福岡アコーディオン・ラボ・コンソート」の公演では、バッハやフレスコバルディの名曲とともに、メロディが追いかけ合うバロック期のラウンド、それに藤枝守の「植物文様アコーディオン曲集」から9つのパターンが演奏されます。それに続いて「アースリズム・アンサンブル・オブ・フクオカ」の公演は、ウィーン在住の声楽家、山中すなおをフィーチャーした「植物文様ソングブック」による全曲プログラムです。また、最後の公演では、福岡を拠点とするガムラン・グループ「パラグナhakata」が藤枝守の「ガムラン曼荼羅」を展望室で演奏します。この展望室は、部屋の中央に大きな階段が据えられ、それを登ると回廊空間となり、福岡の町並みが360度のスコープで眺望できます。この残響豊かな空間が「響きの曼荼羅」に変容します。
今回は、三つの公演の配信に先立って、演奏プログラムや博物館がもつ音響の魅力など、さまざまに語り合う時間を設けたいと思います。また、今後の博物館を中心にした箱崎の可能性についても、話し合う場にしたいと思います。みなさまのご来場をお待ちしています。
将来、旧工学部本館の響きの魅力をお伝えする音楽公演を計画していきたいと思っております。
(Listening Musicum 音楽ディレクター:藤枝守)